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遺伝学と遺伝性疾患伝学と遺伝性疾患

「遺伝性疾患を考える」

トイプードルに限らずとも純血種、もちろん、Mix犬種でも問題となっているのが遺伝性疾患です。

現代社会において、今分かっている遺伝性疾患はおおよそ580種類(2012/09現在)実際に遺伝子検査を行い、判定が出来るものが1割にも満たないのが現状です。
遺伝子は特定出来ても、判定に至るまでの臨床結果などの情報が足らず、または犬種ごとに遺伝形式が違うことで、確定的な診断(判定)が出来ない事例が殆どです。

昨今、トイプードルではPRA(正式にはprcd-PRAのみ)が遺伝子検査が出来るようになり、これさえ、良い結果が得られれば、遺伝病は発症しないというような風潮があります。

先にも書いた通り、580種類あるのです。

他の犬種で好発といわれるものでも、絶対的にプードルで発症しないとは限らないのであり、臨床結果や犬種レベルでの遺伝子の特定や遺伝形式が不明というだけなのです。ですので、遺伝性疾患と言われるもの全てが十分、目の前にいる犬たち全てが発症する可能性を秘めている、又は、遺伝子を保因している(キャリア因子)可能性があるのです。

何故、これほどまでに遺伝性疾患と騒がれるようになったのでしょう・・・。

それは、もちろん、時代と共に高度な研究が出来るようになり、今まで知りえなかったことなどが判明してきたというのもあります。また、情報化を迎えたことで一般の愛犬家たちもいろんな情報を得て発信出来るようになり、一昔前と違い、遺伝病が急速に注目を浴びる結果となったと言えるでしょう。

遺伝子レベルで回避出来るものは、種の保存という観点からも排除していく方向性を明確にし、一般愛犬家の精神的並びに経済的負担を軽減することが出来るのです。

残念ながら、まだほんの一部しか解明されていない分野でもありますが、病気によっては遺伝形式が判明しているものもあります。

遺伝形式伝形式

「常染色体劣性遺伝形式」

今解明されている大多数の遺伝病はこの常染色体劣性遺伝形式と言われています。ではこの遺伝形式は一体どのようなものなのでしょうか。

まずその前に、遺伝性疾患とは遺伝子の変異が原因となって生じる疾患で、単一遺伝子病、ミトコンドリア遺伝病、多因子遺伝病、染色体異常症と大別します。

常染色体劣性遺伝形式は単一遺伝子病の枠に当てはまります。この単一遺伝子病はメンデル遺伝病とも言われます。

さて、この遺伝形式は常染色体上に存在する1対の遺伝子両方に異常がなければ発症することはなく、一方の遺伝子のみに異常がある場合、症状の現れないキャリアつまり、継承する遺伝子を保因しているということになり、遺伝子両方に異常があれば病気が発現する形態のことを言います。

トイプードルで遺伝子検査が出来るprcd-PRA(進行性網膜萎縮症)もこの常染色体劣性遺伝形式です。

このように病名と遺伝形式を把握するだけでも、どのような繁殖計画を立てればいいかが(100%ではないですが)事前にリスク回避が出来る可能性があるのです。

集団遺伝学団遺伝学

「近親交配からみる遺伝学」

純血種は人間による選択交配を長きに渡り実践されてきました。いわゆる見た目や個々の特徴の良い所を受け継ぐために、近親交配(インブリード)を行い、種の固定化を図ってきました。

血が濃い分、同じような個体を産みだし、長所を固定化することが出来ます。しかし、近親交配は短所をも固定化する危険性があります。それを何世代にも渡って近親交配を行ってきた歴史がありますから、現状では近親交配をしなくても遺伝性疾患が発現する可能性が非常に高まっていると考えられます。

つまり、血が濃い(近い)ということは共通の劣性遺伝子を保有していることが言えますので、不良遺伝子の保因率が高くなり、排除することが困難を極めます。もちろん、遺伝子レベルの話なので、突然変異などあるかもしれません。

しかし、実際は全ての遺伝病に対して遺伝子検査が出来ませんので、重要となってくるのが、家族性や家系図を元に計算していくしか淘汰する方法がありません。

家族性を調べた上で次に把握しておかなくてはならないのが、近交係数です。

集団遺伝学にある近交係数の求め方を参考に算出し、犬舎としての係数を把握しておく必要があります。近親交配を行ってきた長い歴史から遺伝病を回避するためにも、一つの目安として繁殖する際の指標とすることが必要ではないかと思います。

単純な求め方の公式は0.5(n+1)×100です。(nは世代数を代入)

3世代をベースに今回は計算してみます。本犬を0世代、父母を1世代、祖父母を2世代、曾祖父母を3世代とします。 交配する牡牝に例えば牡は2世代目、牝は1世代目に共通の犬がいるとします。世代数は2+1=3
公式に当てはめて計算すると、0.5(3+1)×100=6.25%
この6.25%が近交係数となります。

この数値と集団遺伝学で言われている内容を加味すると、ホモ接合割合が増加します。劣性遺伝子の集中率で見ると近親交配をしていない個体に比べ、劣性ホモ接合の子犬が産まれる確立がとても高くなることが分かります。

また、近親交配によって増加したホモ接合の個体が遺伝的荷重が生じてしまうことになります(近交荷重)。これは近交係数と死亡率とに関係があるということです。

いずれにせよ、近親交配には相当なリスクがあり、余程のデータを蓄積した上で行わない限り、遺伝性疾患を持つ個体を限りなく増やす行為であることに他ならないのです。

「近親交配による近交退化」

近親交配を繰り返したことにより、近交退化と言われる現象が表面化してきます。劣性遺伝子がホモ化し、遺伝病という形で表面に現れることです。

近交係数が高くなればなるほど、障害をもたらしたり致死性が高くなる遺伝子が顕在化しやすくなり、主に内臓疾患や骨格異常など先天性異常が現れやすくなります。

個体の矮小化(サイズが小さくなるなど)、繁殖能力の低下、免疫力・抗病性の低下を招く結果にもつながり、犬自体の存在が危ぶまれる自体に陥るのです。

長い歴史から鑑みると、現代においての繁殖計画は遺伝病を十分に配慮した計画を立て、近交退化の現象を回避し、健全な個体の作出を目指していかなくてはならないのです。

「遺伝性疾患の回避するためにはどうするべきか」

遺伝子検査はまだほんの一握りしか解明されていない現在では、遺伝形式の情報取得と家族性(血統図)の把握が何より一番大切であることが理解出来たのではないでしょうか。

純血種という個体の種の保存を考えた時に、各々のブリーダーの情報公開の必要性がこの遺伝性疾患の回避につながり、そして、繁殖した個体については中年齢期・高齢期・末期に渡り、どのような病気(疾患)が発現するかを見届け、若年世代の繁殖計画に役立てることが重要だと思います。

家畜(牛・豚・馬など)はかなりのデータベースが整っています。犬とは違い、人間の食という観点から、かなりの研究が進められています。

犬の場合は家畜と違い重要視されることはまずありませんから、データベースを構築することは前途多難でしょう。しかし、各研究機関や獣医師、ブリーダー、一般愛犬家たちとの連携で、大規模なデータベースを作り上げなくても情報発信していくことで、一歩一歩、遺伝病を回避することが出来るのではないでしょうか。

遺伝病だから「悪い犬」ではなく、人間による悲劇の産物であり、彼らを偏見の目で見るのではなく、何故発現したのかを追求していくことが種の保存に繋がると思うのです。

遺伝病についての理解を深めること、これがまず遺伝性疾患の淘汰の第一歩なのです。

参考文献・サイト

  • 近交係数と避けるべき交配:北海道畜産試験場・家畜研究部
  • 遺伝学概論・第5章集団の遺伝
  • 近親交配があぶない:ホルスタイン通信
  • 動物遺伝育種学
  • Poodle Health Registry

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